eco-バブル®の養殖利用【第3回】 真鯛養殖における成長促進効果とは?

養殖生け簀では、マダイやブリ、サケといった魚が日々成長していますが、同時に大量の糞や残餌が発生し、これが水中の溶存酸素を消費してしまいます。特に夜間には、植物プランクトンの活動が低下するため、酸素濃度が大きく低下し、魚が低酸素状態に陥ることが少なくありません。
熊本県天草市楠浦湾のマダイ養殖場での実証実験では、この問題が顕著でした。暖水期(7〜9月)には、夜間に溶存酸素濃度が5 mg/Lを下回る日が毎日のように発生していたのです。
そこで導入されたのが、水中ポンプ一体型のマイクロバブル発生装置「eco-バブル®-400相当」です。この装置を夜間(午後5時から翌日の午前8時まで)毎日15時間稼働させたところ、夜間の溶存酸素濃度の低下が完全に解消され、マダイは終日、飽和に近い溶存酸素濃度の水中で過ごせるようになりました。
この好適な環境下で飼育された3歳魚のマダイは、約50日間で約22.8%もの成長(体重増加率)が確認されました。これは、eco-バブル®が酸素供給効率を飛躍的に高め、魚の飼料効率を向上させることの具体的な証拠と言えるでしょう。さらに注目すべきは、この環境改善によって、マダイの魚肉部増加量が、従来の方法で飼育した対照生簀と比較して19.4%も向上したという点です。
成長比較データ:
- 従来飼育:296.0g
- eco-バブル®導入:353.4g → 成長率 +19.4%
この19.4%という数値は、個々のマダイの成長率そのものではなく、マイクロバブル発生装置の利用とイトコガイの培養コロニーによる汚泥浄化を組み合わせた「環境改善」が、養殖魚の「肉質・生産性」に与える優位性(改善率)を明確に示すものです。つまり、単に魚が大きくなるだけでなく、養殖環境を整えることで、より効率的かつ質的に優れた魚肉を生産できる可能性が示された、本研究の重要な成果と言えます。
養殖における水質改善と環境負荷の軽減効果
eco-バブル®の効果は、魚の成長促進だけにとどまりません。養殖生け簀で発生する大量の糞や残餌は、水質悪化の大きな要因となります。
eco-バブル®によって水中の溶存酸素濃度が高く保たれることで、これらの有機物の好気性分解が促進されます。これにより、有機物の蓄積が抑制され、水質環境の悪化を軽減し、養殖場の環境負荷低減に大きく貢献することが期待されます。
さらに、魚の飼料効率が向上することで、与えた餌がより効率的に魚体となり、無駄な残餌の発生を抑制する効果も期待できます。これは、間接的に環境負荷の低減につながる重要なポイントです。
持続可能な魚類養殖技術としてのeco-バブル®の可能性
魚類養殖がこれからも持続可能な産業として発展していくためには、生産性の向上と環境への配慮の両立が不可欠です。eco-バブル®技術は、まさにこの両立に貢献する可能性を秘めています。
eco-バブル®は、養殖における酸素供給不足という主要な課題を解決することで、魚の成長を促進し、生産効率を高めます。同時に、水質悪化を抑制し、環境負荷を低減することで、養殖環境の健全化に貢献します。
既存の養殖設備に後付けできる柔軟性と、魚種・環境を問わず応用可能な汎用性もeco-バブル®の大きな特長です。今回のマダイ養殖での成功事例だけでなく、ブリやサケなどの他の魚種への応用も十分に期待できます。
eco-バブル®のような革新的な技術は、養殖業の生産性を向上させながら環境への負荷を低減し、持続可能な水産業の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。
※本データは、熊本県立大学堤裕昭教授の実験、研究によるものです。